大阪・関西万博会場の台湾パビリオン『TECH WORLD(テックワールド)館』で5月12日、開幕1ヶ月を前に来館者が12万人を突破したことを記念して、「SKE48」の元メンバーで俳優の松井玲奈さんをゲストに迎えたイベントが開催されました。
さらに、同パビリオン出展企業「玉山デジタルテック株式会社」の名誉会長・黃志芳(ジェームズ・ファン)さんと松井玲奈さんによるトークセッションの最中、思いがけないサプライズが発生。来館12万5千人目となった親子連れに、台湾行きのペア航空券がプレゼントされると、会場は大きな拍手と歓声に包まれました。
開幕直後に書いたレポートでは、『TECH WORLD館』の見どころやお土産、来場時の注意点などを詳しくご紹介しましたが、今回は本イベントで黃志芳さん・松井玲奈さんへの取材を通じて見えてきた、台湾の最先端テクノロジーの魅力と『TECH WORLD館』の新たな一面をお届けします!
台湾が発信「より良い未来のために必要なものとは何か?」

松井玲奈さんと黃志芳名誉会長(玉山デジタルテック株式会社)によるトークセッション
「ライフ(生命)」「ネイチャー(自然)」「フューチャー(未来)」3つの劇場にわかれた館内では、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚、そして“感性”という六感すべてを刺激する演出で、台湾が誇るスマートテクノロジーやデジタル技術を駆使した圧巻の展示を体験できます。
本イベントにゲストとして来館した松井玲奈さんも実際に館内を回り、「まるで自分が映像の中に入っているような、飲み込まれてしまうくらいきれいな映像に感動しました。その技術力の高さや映像美をぜひ、『TECH WORLD館』で体感してほしいです」と興奮ぎみでコメント。
トークセッションの最後に、「来場者の記憶に残るような体験を設計するうえで、特に工夫した点や伝えたいことは?」という筆者からの問いに対して、黃志芳さんはこう答えました。
「『TECH WORLD館』のテーマは『世界をつなぎ、より良い未来の暮らしへ』。実は、これは万博全体のテーマ『いのち輝く未来社会のデザイン』と連動しています。みなさんに知っていただきたいのは、館内の3つの劇場はそれぞれ、『ライフ(生命)』では人と人、『ネイチャー(自然)』では人と自然、『フューチャー(未来)』では社会と社会のつながりを描いている点。すべてのつながりがあってこそ、私たちが目指すより良い未来を実現すると考えています」(玉山デジタルテック株式会社 名誉会長・黃志芳さん)。
その言葉から、「私たちのより良い未来の暮らしのために、必要なものとは何か?」という問いに対して『TECH WORLD館』が、その答えを体現するパビリオンであることが伺えました。
来館数12万人突破で航空券サプライズ!

突然、祝福の声とともに取材陣の前に呼ばれる親子
来館数12万人を突破した本イベントのトークセッション中に、なんと、12万5千人目に来場した親子に突然、台湾行きの航空券が送られるというサプライズが起こり会場は拍手喝采。
黃志芳さんからの「台湾旅行に大切な人を連れて行くなら、誰と行きたいですか?」という質問に「家族」と回答したお母さん。それに対し「もし1人だけを連れて行くなら、それは誰と行きたいですか?」とさらに深堀り。「えぇっと……旦那です」、その回答にすかさず「それでは、ペアで航空券を差し上げましょう!」と黃志芳さん。「え、航空券?!」と、親子はここでやっとこのサプライズに気が付き、驚きつつも大喜び。多くの方に見守られる中、黃志芳さんから親子に2枚の航空券が贈られることとなりました。
後から聞いた話しによると、もともとは1名分の予定だったそうですが、当選したのが親子だったことから急きょ黃志芳さんが機転を利かせて2名分をプレゼントすると決めたそうです。台湾の方の臨機応変さ、そして、目先の利益にとらわれることなく心で判断するその気前の良さに感動した瞬間でもありました。
世界に誇る台湾テクノロジー技術の凄さを体感

手前のモニュメント、上からよ〜く見ると台湾の島の形をしています!
館内へ案内されると、スタッフから来場者にスマートブレスレットが配られます。

「これは何だろう?」とみなさん不思議そうに腕に装着。
スマートブレスレットを装着したら、いよいよ『TECH WORLD館』の冒険がスタート!
ライフ(生命)

スタッフが丁寧に日本語で説明をします
◆生命劇場
扉を開けて一歩足を踏み入れると、まず目に飛び込むのは大樹を思わせる巨大な円柱状の電子スクリーン。ここに、台湾の森や渓流に息づく多種多様な生物たちの躍動感あふれる映像が、音楽とともに映し出されます。

頭を上げたまま見入ってしまう圧巻の演出
スクリーンを囲むように足元には、まるで意思を持ったかのように光りながら軽快に動く560台ものタブレット端末を設置。台湾に共生する生命の力強さを表現した圧巻の映像に思わず息を呑みます。

画面上で動いてる蝶をタッチすると……
ぐるりと円柱形のスクリーンを反対側に回ると、画面の中でゆらめく蝶が写し出されたタブレット端末が並んでいます。

台湾には日本では出会えない美しい蝶がたくさん生息しているそう
その蝶をタッチするとヒラリと羽ばたき、上空のスクリーンへ仲間たちと舞っていく仕掛け。まるで本物の蝶がそこにいて、自分が自然の中にいるかのような臨場感があります。
実は、台湾には約400種もの蝶が生息しており、日本(約250種)の約1.6倍にあたる豊かな生態系は、標高差の大きい地形と熱帯から亜寒帯まで多様な気候帯を有する台湾ならではの恵みなんだそう。この“命の回帰”を視覚と触覚で体感できる生命劇場は、台湾の技術力と生命への敬意が融合した展示とも言えます。
ネイチャー(自然)

アーチ型の巨大スクリーンに映し出される台湾の絶景
◆自然劇場
エレベーターで2階へ上がると、アーチ型の大きなスクリーンが登場。この高画質の4Kレーザープロジェクターを使用して、台湾の様々な自然の風景や文化を象徴する映像が映し出されます。

台湾の自然の中に溶け込んだかのような気持ちになる不思議な展示
スモークで床から立ち上る霧や雲、ヒノキのほのかな香りまでを再現し、視覚と聴覚だけでなく嗅覚や触覚が同時に刺激されます。
この展示に対し、松井玲奈さんも「映像が本当にきれい、山から朝日が昇る瞬間は本当に自分がそこに立って朝日を見ているような気持ちになりました」と感動した様子でコメントしました。
◆ランの道

実は台湾は蘭大国でもあった……!
台湾から空輸された本物の「胡蝶蘭」に最先端のナノスプレー技術を使って花びらの質を保ったまま美しい色やデザインが施されています。本物の蘭と、LEDディスプレイの中に舞う蝶の映像の幻想的な共演を楽しむことができます。また、驚くことに、台湾には400種類以上の固有種の蘭があり、世界の約1/3が台湾から輸出されているそうです。
◆蛍の道

幻想的な蛍の道をデジタルで表現
台湾には60種類以上のホタルが生息していると言われています。思わずそこにいる蛍を触りたくなるような幻想的な蛍の道を通り抜けて、フューチャー(未来)へと進みます。
フューチャー(未来)
◆AIギャラリー

飽きずにずっと見ていられる、AIが生成した絵画
AIが世界の名画をもとに今と昔の絵を生成。それぞれの画家のタッチはそのままに、まるで絵が生きているかのように映像が変わります。動く絵画を見ていると、どこか異世界の博物館を訪れたかのような感覚を味わえます。
◆未来シアター

人の動きに反応する、高画質で巨大なスクリーン
最先端のインタラクティブ体験ができる未来シアターでは、幅13m × 高さ2.4mの巨大スクリーンを壁一面に展開。スクリーンに近寄って手をかざすと、そこに映し出された半導体の回路図や製造プロセスが次々と動き出します。

女の子の話し口調もAI……?
その後、スクリーン上にロボットと女の子が現れ対話がはじまります。ここでは、未来における半導体の重要性や、台湾が世界に誇る半導体産業の技術力と生産力を体感することができます。

「半導体チップ」が身近なものにどれだけ使われているかを知らされる展示
「『TECH WORLD館』の技術力を最も象徴する展示は?」という筆者の質問には、「なんといっても、私たちの会社で一番重要なのは半導体チップ。普段見えないものだけど、実は、あなたのスマートフォンには約200個もの半導体チップが使われているんだよ」と、気さくに答えてくれた黃志芳さん。
すべてを見終えた後には、自分の身の回りにあるスマートフォンやパソコン、あらゆる電子機器の中にある半導体チップに敬意を払いたくなりました。
AIが心の動きを診断、旅の行き先を提案
はじめに装着したスマートブレスレット、付けていることを忘れるほど素晴らしい展示に没入してしまったわけですが、最後にとっておきの仕掛けがあります。

AIがおすすめしてくれた場所は「府城(台南)」の人気スポットでした!
スクリーンの前でスマートブレスレットをかざすと、心拍数のデータを読み取って、その人がどの劇場で一番心が動いたのかを瞬時に分析してくれます。その後、AIが動画を作成し、その人に合った台湾の行き先を提供してくれるのです……! この動画はQRコードを写真にとっておけば後から何度でも見返すことができます。

『TECH WORLD館』を体験をし、興奮ぎみの松井玲奈さん
館内で度々感動したという松井玲奈さんは「ネイチャー」に心が一番トキメいたと診断されました。AIがおすすめした場所は南投県にある「金龍山」で、台湾には何度も旅行で行ったことがあるそうですが、「ここは行ったことがないので、ぜひ行ってみたい」とコメント。
「どのエリアも映像が本当にきれいです。スマートブレスレットをつけて自分がワクワクしたものを知れるテクノロジーも素晴らしく、映像に臨場感があるからこそ、みなさん心が躍るんだなぁと思いました」(松井玲奈さん)
このように、見るものは同じでも来館者一人一人違った体験を楽しむこができ、様々なテクノロジー技術によって、台湾への好奇心が掻き立てられるような仕掛けがパビリオンのあちこちに散りばめられていました。2回目だからこそ気が付いたこともたくさんあったので、何度行っても楽しいパビリオンだと思いました!
万博限定の台湾グルメ&土産

グルメやお土産は、前回の記事でたっぷり紹介しました!
認知が高まるにつれ、増える待ち時間

60分並んででも見ておきたい素晴らしいパビリオンですが……
開幕3日目に足を運んだ際は、待ち時間は少ない時で5分、長くとも30分でした。なんと、この日は平日の15時で60分待ち! ネットの情報を通して素晴らしい内容であることが伝わり、認知度が高まるにつれて、待ち時間も多くなるはずです。
これからますます暑くなる夏にかけて、少しでも待ち時間を減らすために、パビリオンの予約機能を駆使することをおすすめします!
善意の傘とユニフォームにも注目

待ち時間に傘を貸してくれる嬉しいサービスも!
そして、パビリオンは室内ですが、並ぶ列は野外。これからの日差しが強くなる季節、雨の多い梅雨の時期、帽子はもちろんのこと、日傘や傘も必須になってくる日もあるでしょう。そんな少し憂鬱な待ち時間に、ほっこりするような嬉しい気遣いが……! そう、なんと『TECH WORLD館』では傘のレンタルも行っているのです。

パビリオンの外観に溶け込むスタイリッシュなデザイン
さらに、スタッフが着ているユニフォームにも注目! このデザイン、実は台湾杉をモチーフにしているそうで、生地には台湾産のトウモロコシの繊維や、カキ殻から作られた再生糸が使われているのだとか。
傘をレンタルしたい場合は、このユニフォームを着ているスタッフに声をかけてみてくださいね。

時間によって見え方が変わる『TECH WORLD館』(夕方18時頃)
実は、『TECH WORLD館』もリサイクル可能な金属素材でできているというのは驚き。テクノロジー技術力の高さだけでなく、人や環境への配慮があちこちに感じられることも『TECH WORLD館』の魅力です。
松井玲奈さんの来館や航空券のサプライズプレゼントにより華やかな一日となった素敵な企画でした。今後、『TECH WORLD館』で開催されるイベントについては、前回のレポートでもご紹介しています。大阪・関西万博に足を運ばれる際は、ぜひ予約をとって『TECH WORLD館』で素晴らしい台湾の魅力をあなたの六感で味わってみてくださいね!

毛糸で作った手作りのTW脈脈(ミャクミャク)と、パビリオン内で販売の台湾四季春フルーツティ
万博、再見(またね)~!
■大阪・関西万博(EXPO2025)概要
開催期間:2025年4月13日(日)~10月13日(月)184日間(9時~22時)
開催地:夢洲(大阪市此花区)
公式HP
■TECH WORLD(テックワールド)
公式HP
筆者プロフィール

加賀ま波(MAHA)
台湾大好きライター│ハンドメイド作家
著書に『台湾を自動車で巡る。台湾レンタカー利用完全ガイド』(なりなれ社/KKday・budget協賛)、『慢慢來 あの日の台湾210days』(想創台湾)がある。
2011年、はじめての台湾旅行中に東日本大震災が発生。台湾から見た日本の情景と、自分自身の台湾への無知さとの乖離に違和感を感じ「台湾をもっと知りたい」と思うようになる。同年、嘉義県大林のボランティア活動に参加し、台湾人の温かいおもてなしとキテレツな文化に触れ、帰国後もずっと台湾のことが頭から離れなくなる。その後も渡台を繰り返し、2021年のコロナ禍にワーキングホリデーと留学の夢を叶える。
現在は、美麗(メイリー)!台湾の専属ライターとして、取材執筆、SNS運営、イベント運営などを担当。個人の活動では「想創Taiwan」というブランドを展開、原住民レースなどでオリジナル雑貨を創作し日本各地の台湾関連イベントで販売中。
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