台湾東部の雄大な自然に包まれた花蓮(ホァリエン)。太平洋の海と山々に囲まれる花蓮の魅力は、その絶景だけではありません。原住民族の伝統料理や、地元の食材を使ったご当地グルメなど、大自然の恵みが育んだ美食の宝庫でもあります。
前回の記事では、2024年に花蓮沖で発生した地震から1年を経た花蓮の最新観光情報をもとに、花蓮のおすすめ観光スポット8選をご紹介しました。
今回は、台湾東部・花蓮への旅行を検討している方に向けて、現地でぜひ味わってほしい“花蓮のおすすめグルメ8選”と、その背後にある“知られざるストーリー”をご紹介します!
花蓮おすすめグルメ8選と、知られざるストーリー
1.扁食/ワンタン

花蓮に来たら食べ比べしたい「扁食」
花蓮の定番ローカルフードといえば、「扁食(ピェンシー)」と呼ばれるワンタンスープ。
花蓮市内には、「扁食」専門の老舗が点在しており、どこも行列ができる人気ぶり。「扁食」は、細かく刻んだ豚肉を、薄くなめらかな皮でふんわり包み、あっさりとしたスープでいただく花蓮のご当地グルメです。地元民いわく、途中でお酢を少し加えるとサッパリと味が変わって、二度楽しめるのだとか。小腹がすいたときにもちょうど良い量で、やさしい味わいは日本人の口にもよく合います。

いつも店頭に人が並んでいる人気店「液香扁食」
そして実は、「扁食」という呼び名が福建語(閩南語)由来であることをご存じでしょうか?
中国語(台湾華語)では一般的にワンタンのことを「餛飩(フントゥン)」と呼ぶため、中国語(台湾華語)を勉強したことがある方にとっては少し不思議に感じたかもしれません。
実は、この呼び名は、かつて中国・福建省から花蓮に移り住んだ人たちが「扁食」という呼び名で店を構えたのが始まりだそうです。その後、地元に定着し、今では「扁食」は花蓮を代表するご当地グルメの一つとなりました。
お店によって味付けや具材が少しずつ違うので、ぜひ食べ比べを楽しんでみてください!
2.竹筒飯

竹の中にぎっしりお米がつまった主食「竹筒飯」
「竹筒飯(ジュートンファン)」は、竹の筒にもち米や具材を詰めて蒸した主食で、花蓮に暮らす原住民族の伝統的な料理の一つです。食べる前に思わず写真を撮りたくなるような珍しい見た目も特徴的で、竹の香りがお米に染み込み、独特の風味を楽しめます。中には地元の鶏肉や山菜が入っていることもあり、花蓮の自然の恵みを感じる逸品です。花蓮の山間部で特によく食べられており、観光客にも人気があります。

馬羅山ハンター学校で「竹筒飯」を手作りしました!
そして、「竹筒飯」の起源を調べてみると、原住民族の暮らしと深く関りがあることがわかりました。
以前、花蓮に暮らす原住民族が山へ狩りに行く際、1ヶ月近くもの長い間、山にこもって生活をしなければならかったそう。そのため、村から持っていける食料が限られていたので腹持ちの良いもち米を持参し、山にある竹を使って山の中でご飯を炊いたのが「竹筒飯」のはじまりと言われています。
「竹筒飯」を手作りできる体験スポット「馬羅山ハンター学校」は、【台湾原住民族を学ぼう② 】台湾野球の快挙を支えた「アミ族」の文化に迫る!で紹介中。
3.麻薯/おもち

お気に入りの味を探してみてほしい「麻薯」
「花蓮でおすすめのお土産は?」と現地の人に聞くと、ほぼ間違いなく名前が挙がるのが「麻薯(マーシュゥ)」と呼ばれるおもちです。「麻吉(モァチー)」と呼ばれることもありこの「モァチー」という言葉は、日本語の「餅(もち)」に由来した台湾語。確かに、よく耳をすませば、その発音の名残を感じられます。

個包装タイプはバラマキ土産にも◎(出典:花蓮小舖)
日本のお餅よりもさらにやわらかく、ぷるんとした弾力が特徴で、小豆や、ピーナッツ、黒糖、ゴマ、フルーツなどの粉がたっぷりまぶしてあったり、中にクリームが入っていたり様々な味が楽しめます。
ひと口サイズで食べやすく硬くなりにくいので、旅のお供やおやつにぴったり。専門店で手作りされるフレッシュなタイプは日持ちが短めですが、個包装タイプのものなら賞味期限も長く、お土産やバラマキ用にも最適です。
ぜひ花蓮を訪れたら、様々な味を食べ比べて、自分好みの「麻薯」を見つけてみてください。
4.花蓮薯/さつまいもケーキ

花蓮のさつまいものケーキと言えば「洄瀾薯道」!
花蓮のもう一つの定番土産と言えば、「花蓮薯(ホァリエンシュゥ)」と呼ばれるさつまいものケーキ。
花蓮の特産であるさつまいもを使用した人気のスイーツで、専門店やお土産ショップで手に入れることができます。

ここ、本当におすすめです。(出典:洄瀾薯道)
中でも80年以上の歴史を誇る老舗「洄瀾薯道(ホイルンシュウダオ)」の花蓮芋ケーキが人気です。
外はホクッ、中はねっとりとスイートポテトのような食感のものから、やわらかいおもちの入ったものまで。さつまいもの自然の旨味を生かした素朴で優しい味わいなので、老若男女問わず日本人の口にも合います。ほどよい甘さでコーヒーや紅茶、お茶との相性も良く食後のおやつにも◎ 日持ちのする個包装タイプもあり、花蓮に来たら自分用やお土産に必ず買いたい一品です!
ちなみに、これも実は、花蓮に暮らす原住民族に縁があり、彼らが狩りや漁に出る際に携帯していたという「芋団子」がルーツなのだそう。「洄瀾(ホイルン)」は花蓮の昔の呼び名でもあり、現代風にアレンジされた「花蓮薯」は、花蓮の特産を使った優しい甘さとしっとり感が魅力の花蓮グルメの一つです。
5.玉里麵

汁なし・汁ありどちらが好み?
花蓮南部・玉里鎮発祥のご当地麺「玉里麵」は、花蓮グルメの中でも人気の一品です。
手打ちのちぢれた細麺に、香ばしいラードやネギ油、ひき肉などを合わせた特製ダレがよく絡み、シンプルながら一度食べたらやみつきになる味わい。モチモチとしたコシのある麺は、日本の油そばを思わせるような食感で、スープなし・ありの両方がありますが、筆者はスープなしの「乾麺(カンミェン)」タイプ一択。
朝食としても親しまれており、ローカル感あふれる花蓮ならではの一杯。花蓮市内でも食べられますが、本場・玉里で味わう「玉里麵」は格別です。訪れた際には、ぜひ味わってみてください!
6.山猪肉/いのしし肉

今でも忘れられない美味しすぎて感動した「いのしし肉(山猪肉)」
花蓮で原住民族の料理に欠かせない食材といえば、豚肉と「いのしし肉(山猪肉)」。
特に「いのしし肉」は、豚肉よりも歯ごたえがあり、弾力のある食感が特徴。肉の旨みがぎゅ~っと凝縮されていて、一口食べれば山の中を駆け回っていたその生命力が伝わってくるような、野性味あふれる味わいです。
調理法は鉄板焼きや燻製、炒め物が主流で、味付けはシンプルに塩、ニンニク、唐辛子など。素材のうまみを引き出す素朴な味付けが、ビールや後述の小米酒(アワを使ったお酒)との相性も抜群です。
花蓮おすすめスポット8選でも紹介した「東大門夜市・原住民一條街」でも食べることができるので、訪れた際はぜひチャレンジしてみてください。お肉好きには外せない、花蓮のパワーフードです!
7.蝸牛/カタツムリ

カタツムリって、あの……?
台湾原住民・アミ族の伝統料理として知られる「蝸牛(ウォーニョウ/カタツムリ」。その姿形もよ~く見ればちゃんとカタツムリなため、「え、カタツムリを食べるの?」と戸惑うのも当然ですが、実は意外にも食べやすく、これがお酒好きにはたまらない一品です。
また、大量のお酒でじっくりと煮込まれているためか、臭みはまったくなし。コリコリとした独特の食感とともに、ほんのりとお酒の香りがふわりと広がり、味付けはしっかり濃いめのためビールや小米酒との相性も抜群です。
こちらも夜市や原住民料理のレストランなどで提供されており、「話のネタに一度食べてみたい!」というチャレンジャーにはもってこいの珍グルメ。ちなみに「カタツムリ」は、アミ族の言葉で「ガズムリ」と呼ばれるらしく、これも日本語由来なのかもしれません。
8.小米酒/アワ酒

強いお酒がニガテな方にも飲みやすい「小米酒」
さいごに紹介したいのが、小米(アワ)から作られる台湾原住民・アミ族の伝統酒「小米酒(シァオミージョウ)」。
透明感のある黄金色で、香りはふんわり甘く、口当たりもまろやかなので、キツイお酒はあまり飲めないという方にとっても「これは飲みやすい! 美味しい!」と思う方が多いようです。ただ、アルコール度数は5~10%程度と低めですが、その飲みやすさがゆえにゴクゴク一気飲みしないよう注意が必要です(笑)。
食前酒としても食後酒としてもぴったりで、前述の「竹筒飯」や山の料理、燻製肉などとの相性も抜群。お祝いごとや儀式など、原住民・アミ族の文化とも深く結びついています。 お酒が好きな方はもちろん、台湾の伝統文化に興味のある方にもおすすめしたい一杯です。
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花蓮の気候・ベストシーズン

台風は避けたい! 花蓮のベストシーズンは……?
花蓮は南北に長く、東は太平洋、西は3000m級の山々がそびえたつ特殊な地形にあります。
ベストシーズンは12月~4月で、平均気温が18℃と日本に比べると温かく雨が少ない時期です。しかし降水日数は多いです。
一方で、5月~10月は雨の多い時期となります。夏場は気温が30℃以上になりスコールもあるので晴れていても折りたたみの傘は必須です。また、厄介なのが台風。太平洋側ということで台風の影響をモロに受け、今年も大きな台風が度々花蓮を襲い大きな被害を受けた地域もあります。
旅行が決まったら直前まで天気予報をチェックするのを忘れずに!
アクセス

鉄道で台北から約2時間半……意外に近い?
花蓮へアクセスする方法は、台湾鉄道・飛行機・バス・自動車の主に4種類。
◆飛行機
台北松山空港 ↔ 花蓮空港 約50分
高雄空港 ↔ 花蓮空港 約1時間
時間がなくできるだけ早く行きたいという方におすすめです。
◆鉄道
台北駅 ↔ 花蓮駅 約2時間半
花蓮駅 ↔ 台東駅 約1時間半
高雄駅 ↔ 花蓮駅 約4時間半
のんびりと車窓からの風景を見ながら鉄道旅も楽しみという方におすすめです。
山側の席をとれば、遠くにそびえ立つ「タロコ渓谷」を、海側なら「清水断壁」を車窓から眺めることもできます。
◆バス
【花蓮バス】花蓮 ↔ 成功(海線1145路線) 約3時間
【鼎東バス】花蓮 ↔ 台東(海線8119路線)約4時間
花蓮や屏東から特定のエリアに向かう場合は、バスが安くて便利です。ただし、台北からの直行便はなく、渋滞すると予定より大幅に時間がかかることも。時間に余裕があり交通費を節約したい方におすすめです。
自動車
台北 ↔ 花蓮(台9線) 約160km
花蓮 ↔ 台東(台11線) 約170km
高雄 ↔ 花蓮(台11線) 約330km
広大な土地が広がる東エリアは、各スポットまでの距離も長く公共交通機関のみのアクセスはなかなか困難なことも。勇者にはレンタカー旅もおすすめです!
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▶日本初の台湾レンタカーガイド『台湾を自動車で巡る。台湾レンタカー利用完全ガイド』もおすすめです。
以上、絶景だけでなく美食の宝庫でもある花蓮。ここでしか味わえない個性豊かなご当地グルメの一部をご紹介しました。
花蓮おすすめスポット8選では、美しい太平洋の絶景や、家族で楽しめるレジャー施設など、花蓮ならではの魅力もたっぷりご紹介しているので、ぜひあわせてご覧いただけると嬉しいです。
次の台湾旅行の行き先に迷っている方は、ぜひ花蓮も候補の一つに。実際に訪れて、花蓮の自然・文化・人の温かさに触れてみてください。そして一緒に、花蓮を応援しましょう!
花蓮加油~(花蓮がんばれ~)!
筆者プロフィール

加賀ま波(MAHA)
台湾大好きライター│ハンドメイド作家
著書に『台湾を自動車で巡る。台湾レンタカー利用完全ガイド』(なりなれ社/KKday・budget協賛)、『慢慢來 あの日の台湾210days』(想創台湾)がある。
2011年、はじめての台湾旅行中に東日本大震災が発生。台湾から見た日本の情景と、自分自身の台湾への無知さとの乖離に違和感を感じ「台湾をもっと知りたい」と思うようになる。同年、嘉義県大林のボランティア活動に参加し、台湾人の温かいおもてなしとキテレツな文化に触れ、帰国後もずっと台湾のことが頭から離れなくなる。その後も渡台を繰り返し、2021年のコロナ禍にワーキングホリデーと留学の夢を叶える。
現在は、美麗(メイリー)!台湾の専属ライターとして、取材執筆、SNS運営、イベント運営などを担当。個人の活動では「想創Taiwan」というブランドを展開、原住民レースなどでオリジナル雑貨を創作し日本各地の台湾関連イベントで販売中。
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