【2026年最新】シラヤ族が台湾17番目の原住民族に。30年以上の歩みと受け継がれる文化とは

カルチャー

2026年7月30日、台湾で歴史的な発表がありました。
台湾南部を中心に暮らすシラヤ族(Siraya)が、台湾政府によって正式に17番目の台湾原住民族として認定されたのです。

これまで台湾政府が公認していた原住民族は16族でした。今回の承認によって、シラヤ族は「平埔原住民族群身分法」に基づき、行政院の承認を受けた初めての平埔原住民族となりました。

この出来事は「新しい原住民族が誕生した」という意味ではありません。
シラヤ族は何百年もの間、この土地で暮らし、独自の文化や祭祀、民族としての誇りを守り続けてきました。今回の承認は、長い歴史の中で守られてきた存在が、ようやく法的にも認められた大きな一歩なのです。

シラヤ族とは? 台湾南部に根付く平埔族最大の民族

シラヤ族は、台湾南西部を代表する平埔族の一つです。前述の通り、2026年7月には正式に平埔原住民族として認定され、台湾原住民族の17番目の民族となりました。

「Siraya(シラヤ)」という名称は、シラヤ語で「人」を意味するという説があります。また17世紀、台湾へ進出したオランダ人が台南周辺の集落を「Siraya」と記録したことが名前の由来ともいわれています。

主な居住地域は現在の台南市周辺で、台南平原から恒春半島にかけて広い範囲に暮らしていたと考えられています。主に、新港(シンカン)、蕭壠(シャオロン)、目加溜灣(ムカリウワン)、麻豆(マードウ)などの集落を中心に発展しました。平埔族の中でも人口が多く、勢力の大きかった民族で、台湾の歴史を語る上で欠かすことのできない存在です。
現在の台南には、シラヤ族の子孫が暮らし、伝統文化を守る活動を続けています。

「私はシラヤ族!」 と大きく書かれた塀(出典:交通部觀光署 西拉雅國家風景區管理處

「台湾の歴史は台南から始まる」その土地に暮らしていたシラヤ族

台湾の歴史を語る時、「台湾の歴史は台南から始まる」と表現されることがあります。
17世紀、オランダが台湾南部へ進出した際、現在の台南周辺にはすでにシラヤ族をはじめとする平埔族が暮らしていました。オランダ人はシラヤ族と交流し、交易を行い、当時の生活や社会について記録を残しています。
つまり、台湾史の舞台となった台南には、漢民族が大規模に移住する以前から、先住民族の暮らしが存在していたのです。台湾の歴史を深く知るには、シラヤ族の歴史を知ることが欠かせません。

なぜシラヤ族は今まで原住民族として認められなかったのか

現在、台湾にはアミ族、タイヤル族、パイワン族など、政府が認定する原住民族が存在します。
一方で、シラヤ族を含む平埔族は長い間、公的な原住民族として認められていませんでした。
その背景には、台湾の歴史的な変化があります。平地に暮らしていたシラヤ族は、17世紀以降、漢民族との交流が増え、農業技術や生活文化を取り入れていきました。また、長い年月の中で通婚も進み、外部からは「漢民族社会に同化した」と見られるようになりました。
しかし、それは文化や民族意識が消えたことを意味するものではありません。
祖先を祀る祭儀、集落のつながり、伝統的な信仰など、シラヤ族としての文化は受け継がれてきました。

そのほか、まだ政府に認められていない平埔族(カハブ族、パゼッヘ族、タオカス族、タイボアン族、パポラ族、マカタオ族、バブザ族、ケタガラン族など)も「平埔原住民」の承認を目指しており、原住民族委員会に審議するよう求めています。

白・黒・紫色を基調としたシンプルな衣服を着用し、髪を結い上げず、頭全体を紫色の布と草花で飾っています。 (出典:交通部觀光署 西拉雅國家風景區管理處

30年以上続いたシラヤ族の承認への歩み

1990年代 民族名回復運動が始まる
2009年  原住民族登録を求め行政訴訟を提起
2022年  司法院憲法法廷が平埔族を制度から除外している現状は違憲と判断
2025年 「平埔原住民族群身分法」が成立
2026年7月30日 行政院がシラヤ族を17番目の台湾原住民族として正式承認

シラヤ族が正式な民族として認められるまでには、長い時間が必要でした。
1990年代から、シラヤ族の人々は民族名や文化を取り戻す運動を開始し、書籍の出版、歴史調査、祭祀の復興、言語研究など、自分たちの存在を社会へ伝える活動を続けてきました。
そして2009年には、原住民族としての登録を求める行政訴訟を起こします。

大きな転機となったのは2022年です。
台湾の司法院憲法法廷は、平埔族を含まない現在の制度について、原住民族としてのアイデンティティを持つ人々の権利が十分保障されていないとして違憲判断を示しました。
その後、2025年には「平埔原住民族群身分法」が成立。
そして2026年7月30日、ついにシラヤ族が正式承認されました。

今回の承認によって、シラヤ族は平埔原住民として初めて行政院の認定を受けた民族となりました。
今後、認定条件を満たす人は、各自治体でシラヤ族の構成員登録を行った後、戸政事務所で平埔原住民身分の登録手続きを進めることになります。一方で、既存の原住民族と同じ制度や権利がすぐに適用されるわけではなく、政府は今後3年以内を目標に関連制度の整備を進める予定です。

シラヤ族に伝わる「夜祭」。祖先への感謝や自然との調和を願う重要な祭祀で、現在まで受け継がれている。 (出典:交通部觀光署 西拉雅國家風景區管理處

シラヤ族に受け継がれる独自の文化

◆自然と祖先をつなぐ「夜祭」
シラヤ族を代表する文化が、夜祭(夜祭儀式)です。
夜祭は単なる祭りではありません。
祖先への感謝、神々への祈り、自然との調和を願う重要な宗教儀式です。
シラヤ族にとって自然は、人間が支配するものではなく、ともに生きる存在でした。夜祭では祖霊を迎え、歌や祈りを通して、民族の記憶やつながりを次世代へ伝えています。
現在でも台南周辺の集落では、伝統を守りながら夜祭が行われています。

◆祭祀の場所「公廨」
シラヤ族文化を語る上で欠かせないのが公廨(こうかい)です。
公廨はシラヤ族独自の祭祀施設で、祖霊や神々を祀る大切な場所です。
漢民族の寺廟とは異なり、シラヤ族の信仰や世界観が表れる空間として、現在も重要な役割を果たしています。

消えかけたシラヤ語を未来へ

シラヤ族の文化復興で特に注目されているのが、言語の復活です。
長い歴史の中で日常的に使われなくなったシラヤ語ですが、17世紀にオランダ人宣教師らが残したローマ字表記によるシラヤ語資料が現在まで保存されていました。
それらの記録をもとに研究が進められ、現在では、シラヤ語辞典の制作、子ども向け学習活動、言語教育などが行われています。
言葉は民族の記憶そのものです。失われかけた言語を取り戻す活動は、シラヤ族の文化復興を象徴する取り組みとなっています。

シラヤ族の名前を冠した「シラヤ国家風景区」

オンライン上で「シラヤ国家風景区」のバーチャルツアーが体験できます。 (出典:交通部觀光署 西拉雅國家風景區管理處

台湾には多くの国家風景区がありますが、「シラヤ国家風景区(西拉雅國家風景區)」は、台湾で初めて地域に根付く民族文化・人文を名称に取り入れた国家風景区です。
この地域には豊かな自然だけでなく、先史時代の遺跡やシラヤ族の文化が残されています。
現在もシラヤ族の子孫が暮らし、夜祭や伝統文化が受け継がれています。
台南旅行では、台南市街の歴史スポットだけでなく、少し足を延ばしてシラヤ文化に触れる旅もおすすめです。
「シラヤ国家風景区管理処」の公式HPには詳しく案内が載っており、オンライン上で360度「シラヤ国家風景区」を見渡すこともできます。

シラヤ族の承認が意味するもの

今回のシラヤ族承認は、台湾にとって大きな意味を持つ出来事です。
それは「17番目の民族が増えた」という話だけではありません。
何百年もの間、土地とともに生き、文化や言葉、祖先への思いを守り続けてきた人々の歴史が、正式に認められたということです。

台湾には現在も、さまざまな民族の記憶が息づいています。
美しい景色やグルメだけではなく、その土地で暮らしてきた人々の歴史を知ることで、台湾の魅力はさらに深く感じられるはずです。
次に台南を訪れる時は、ぜひシラヤ族の文化や歴史にも目を向けてみてください。
そこには、台湾という島の長い物語があります。

■参考記事

交通部觀光署 西拉雅國家風景區管理處
https://www.siraya-nsa.gov.tw/zh-tw/about-siraya/pinnacles
中央社(フォーカス台湾)日本語版
https://japan.focustaiwan.tw/society/202607300010


記事執筆:加賀ま波 (MAHA)

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筆者プロフィール

加賀ま波(MAHA)
台湾大好きライター│ハンドメイド作家
著書に『台湾を自動車で巡る。台湾レンタカー利用完全ガイド』(なりなれ社/KKday・budget協賛)、『慢慢來 あの日の台湾210days』(想創台湾)がある。

2011年、はじめての台湾旅行中に東日本大震災が発生。台湾から見た日本の情景と、自分自身の台湾への無知さとの乖離に違和感を感じ「台湾をもっと知りたい」と思うようになる。同年、嘉義県大林のボランティア活動に参加し、台湾人の温かいおもてなしとキテレツな文化に触れ、帰国後もずっと台湾のことが頭から離れなくなる。その後も渡台を繰り返し、2021年のコロナ禍にワーキングホリデーと留学の夢を叶える。

現在は、美麗(メイリー)!台湾の専属ライターとして、取材執筆、SNS運営、イベント運営などを担当。個人の活動では「想創Taiwan」というブランドを展開、原住民レースなどでオリジナル雑貨を創作し日本各地の台湾関連イベントで販売中。HP・通販Instagram

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