東京で初開催!台湾近代美術と文化を横断する展覧会「共時的星叢」が東京都現代美術館で開幕へ

カルチャー

台湾と日本の近代文化のつながりをひも解く大規模な展覧会「共時的星叢 ― 時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」が、2026年9月5日(土)から12月13日(日)まで、東京都現代美術館で開催されます。

台湾と聞くと、夜市のグルメやフルーツ、おしゃれなカフェ、歴史ある街並みなどを思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、台湾の魅力は食や観光だけではありません。台湾には、長い歴史の中で育まれてきた文学、美術、音楽、建築など、豊かな文化の歩みがあります。特に近代以降の台湾では、日本統治時代という大きな歴史の変化の中で、日本や東アジア、そして世界の芸術潮流と交わりながら、独自の表現が生まれていきました。
1930年代の台湾では、若い芸術家や詩人たちが新しい価値観を求め、既存の枠にとらわれない前衛的な活動を展開しました。絵画だけではなく、詩、映画、音楽、演劇など、さまざまな分野で国境やジャンルを越えた文化交流が行われていたのです。

本展は、日本で初めて台湾近代美術を大規模に紹介する展覧会であり、台湾の芸術史を知る貴重な機会となります。台湾を訪れたことがある人も、これから旅を計画している人も、作品を通して新たな台湾の一面に出会えるでしょう。

東京都現代美術館。台湾近代美術を日本で大規模に紹介する展覧会「共時的星叢」の会場。

「共時的星叢」とは?

時を共にした星たちが描く、台湾と日本の文化交流

「共時的星叢(きょうじてきせいそう)」という少し印象的な名前には、今回の展覧会の大切なテーマが込められています。
「共時的」とは、異なる場所に存在するものが、同じ時代を生き、互いに影響し合うこと。
そして「星叢」とは、夜空に輝く星々が集まり、ひとつの星の群れを形作るような姿を表しています。
つまり「共時的星叢」とは、それぞれ異なる場所で活動していた芸術家や文化人たちが、同じ時代の中で出会い、影響を与え合いながら輝いた姿を表現した言葉です。

「共時的星叢」の見どころ

台湾近代美術の名作が東京に集結

本展の最大の見どころは、日本で初めて台湾近代美術を大規模に紹介する展覧会であること。
台南市美術館、台北市立美術館、国立台湾美術館、高雄市美術館、国立台湾図書館など、台湾を代表する15館以上の美術館・博物館、そして個人コレクションから、絵画、彫刻、版画、写真作品など約200点が集められます。
さらに、書籍や雑誌、書簡、アルバム、音楽資料など約500点の貴重な資料も展示され、台湾近代美術がどのような時代背景の中で生まれたのかを知ることができます。
出品作家には、台湾近代彫刻の先駆者・黄土水、台湾人初の帝展入選画家・陳澄波をはじめ、李梅樹、林玉山、郭雪湖など、台湾美術史を語るうえで欠かせない芸術家たちが名を連ねます。
これほど大規模に台湾近代美術を日本で紹介する機会は、本展が初めてとなります。

台湾の建築スタジオが手掛ける「体験する展示空間」

作品そのものだけではなく、展示空間にも注目です。
会場構成を担当するのは、台湾を拠点に活動する建築スタジオ「UxU Studio」。
反射素材などを用いた空間設計によって、作品と作品、過去と現在、そして鑑賞する人自身との関係性が生まれるような展示がつくられます。
単に作品を眺めるだけではなく、鑑賞者も展示空間の一部となり、台湾と日本の文化が交差してきた歴史を体験できる構成になっています。
「共時的星叢」というタイトルが表すように、異なる時代や場所で生まれた芸術が、ひとつの空間の中で響き合う展示となっています。

映画監督・黄亜歴氏が導く、忘れられた文化の再発見

本展のゲストキュレーターを務めるのは、台湾の映画監督・キュレーターである黄亜歴(HUANG Ya-li)氏です。黄氏は、映画とキュレーションを横断しながら、歴史の中で忘れられてきた文化的なつながりを掘り起こす活動を続けています。
2015年に監督した映画『日曜日式散歩者(Le Moulin)』では、1930年代台湾のモダニズム詩社「風車詩社」を描き、台湾のアカデミー賞とも呼ばれる金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞しました。
また、2019年には国立台湾美術館で「共時的星叢:〈風車詩社〉與跨界域藝術時代」を企画し、台湾の前衛芸術運動と文化交流を紹介しました。
今回の東京都現代美術館での展覧会は、長年にわたり台湾文化史を掘り下げてきた黄氏の研究と視点を、より大きな規模で紹介する機会となります。

美術だけではない。文学・音楽・演劇まで広がる資料群

展示されるのは、約500点に及ぶ多彩な資料を通して台湾の文化史。
当時台湾と日本で出版された書籍や雑誌、芸術家同士の交流を伝える書簡、個人のアルバムやメモをはじめ、文学、音楽、レコード産業、舞踏、演劇、工芸など、近代台湾の文化活動を伝える資料も紹介されます。
これらは単なる作品の補足資料ではありません。ひとつひとつの資料が、台湾近代文化を形づくった「星」のような存在として、作品とともにひとつの時代の姿を浮かび上がらせます。

また、台湾原住民族に関する資料も重要な展示のひとつです。
日本統治期の調査や記録の中で収集・分類された資料を、現代の視点から見つめ直すことで、台湾の歴史や文化をより深く理解するきっかけとなります。

台湾を知るうえで忘れてはならない、原住民族の人々のこと。

台湾原住民族資料から見る歴史のまなざし

記録された文化を、現代の視点から読み解く

台湾には現在、政府によって認定された17の原住民族が暮らしています。阿美族(アミ族)、排灣族(パイワン族)、泰雅族(タイヤル族)など、それぞれ独自の言語、伝統、祭り、工芸、生活文化を受け継いでいます。
台湾の文化を語るうえで、原住民族の存在は欠かすことができません。
一方で、日本統治時代には台湾原住民族について、人類学や民族学の視点から多くの調査や記録が行われました。
当時撮影された写真、収集された工芸品、生活道具、衣装などの資料は、現在では台湾の歴史を知る貴重な手がかりとなっています。
しかし、これらの資料を見る際には、単に「昔の台湾原住民族の暮らしを紹介するもの」として捉えるだけでは十分ではありません。
そこには、当時の研究者や行政側が持っていた視点や、時代背景も含まれています。

誰が記録したのか。どのような目的で残されたのか。そして、記録された人々自身の声はどこにあるのかーー。
こうした問いを持ちながら資料を見ることが、現代における歴史の読み解きにつながります。

「共時的星叢」が問いかけるもの

本展では、現代の私たちが、歴史をどのような視点で見るのかを問いかける展示でもあります。
台湾近代美術の作品、文学や映画、そして原住民族に関する資料。一見すると異なるジャンルに見えるものですが、そこには共通して「人々がどのように自分たちの存在や文化を表現してきたのか」というテーマがあります。

「共時的星叢」は、台湾の芸術や文化を美しい作品として鑑賞するだけではなく、その背景にある歴史や人々の声にも目を向ける展覧会です。
台湾を旅するとき、山や海、街並み、祭り、工芸品など、さまざまな場所で出会う文化の背景には、長い時間を生きてきた人々の記憶があります。
今回の展示は、そんな台湾の奥深い文化を知るための新たな入り口になるでしょう。

開催情報

会期:2026年9月5日(土)~12月13日(日) 東京都現代美術館
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館30分前まで)
会場:東京都現代美術館(企画展示室 1F/3F) 東京都現代美術館
アクセス:東京メトロ半蔵門線「清澄白河」駅B2出口徒歩9分
休館日:月曜(9/21、10/12、11/23は開館)、9/24、10/13、11/24 東京都現代美術館
観覧料:一般2,000円(1,600円)、大学生・専門学校生・65歳以上1,400円、中高生800円、小学生以下無料
公式HP: https://synchronic-constellation.com/

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