なぜ今、台湾漫画が熱い?歴史・特徴・おすすめ作品まで徹底解説

カルチャー

台湾のエンタメといえば、みなさんは何を思い浮かべますか。
ドラマや映画、音楽も人気ですが、近年世界的に注目されているのが台湾の漫画です。
すでに日本でも「用九柑仔店(日本語タイトル:用九商店)」や「綠之歌(日本語タイトル:緑の歌)」は日本語版が出版されており、多くの人に読まれていますね。

本記事では、そんな台湾漫画の歴史や特徴に迫りつつ、一緒に魅力を発見できればと思っています。
最後には、個人的視点からおすすめの漫画も紹介しているので、ぜひ最後までお付き合いください!

台湾漫画 “波乱の歴史”

台湾の漫画には2回の黄金期があったと言われています。

1度目は、1950~1960年代
この時代は武侠漫画が中心で、「善vs悪」というストーリーが当時の反共・反ロシアの政策とも重なり、政府もその人気を支持しました。

しかし、1960年代に入ると、漫画の検閲法が制定され、多くの漫画雑誌が休刊や廃刊になってしました。
一方で、日本の漫画はこの法律を逃れ、多くの海賊版が台湾内に出回りました。
そんな状況を受け、台湾政府は検閲を緩めることに決め、台湾漫画の出版も後押しされました。

1980〜1990年代に、再び台湾漫画が興隆し、多様な作家が登場するようになりました。
しかし、1990年代後半にはインターネットが一般家庭にも広がりはじめ、娯楽・消費の変化が、漫画業界に打撃を与えました。
また、日本漫画の輸入もどんどん進んだことから、台湾内の漫画制作は滞ってしまったのです。 

政府主導の「台湾漫画」戦略

2000年代に入ると、台湾政府は漫画への積極的な支援に乗り出しました。
例えば、蔡英文元総統は、漫画・アニメーション産業に関連する6大政策を打ち出しました。漫画産業の人材育成やデジタルプラットフォームの整備、テクノロジーとの融合等が掲げられました。
その背景には、漫画やアニメがソフトパワーになりうるという考えがあったようです。
特に、漫画は異分野への展開がしやすく、文化産業の重点項目として推進されています。その点から、政府は、漫画家だけでなく、出版社の柔軟なマーケティングや外国語への翻訳に対しても支援を提供しています。

2010年には、台湾漫画の最高栄誉とされる「ゴールデン・コミック賞(金漫賞)」が創設され、2025年に第16回を迎えました。さらに、2026年の1月には、青少年向けの漫画コンテストである「青漫賞」の授与式が初めて行われました。

第16回ゴールデン・コミック賞 受賞式の様子
引用:中華民国(台湾)文化部

このような政策のもと、政府主導でさまざまな漫画関連サービスやスポットもできました。 

台湾漫画に触れられるサービス&スポット

CCC追漫台

2009年に中央研究院(総統府直属の研究機関)は、台湾の歴史や社会などをテーマにした漫画を集めた「Creative Comic Collection 創作集」を創刊しました。
その後、2020年に、台湾文化コンテンツ産業のサポートと国際化を推進する独立行政法人の文化内容策進院(TAICCA)がこれを引継ぎ、紙媒体の雑誌からデジタルプラットフォームへと変わりました。
同時に、数と質の両方における漫画コンテンツの増加が図られました。
台湾漫画の普及に力を入れながら、台湾漫画が人々の日常生活に取り入れられること、そして人々の視野の拡大に貢献することを目指し、運営されているそうです。
今では台湾最大の漫画プラットフォームとなっています。

Taiwan Comic City

CCC追漫台同様に、TAICCAが公開しているオンラインサイトです。
台湾漫画の海外市場への進出を促進するためにつくられました。
厳選された漫画が英語、フランス語、日本語で試し読みできるようになっており、声・映像で台湾の漫画が楽しめるよう多言語のヴォイスコミックも用意されています。

台湾漫画基地

カフェスペースもあるので、一冊買って、その場で読む楽しみ方も!
引用:中華民国(台湾)文化部

2019年1月に、台湾政府文化部の下でオープンした漫画博物館です。
台北駅から歩いて5分という立地で、1階はオリジナル作品の展示や漫画の販売スペース、2階は展示やイベントを行うスペースとなっています。販売されている漫画の種類が豊富なため、台湾の漫画ファンが頻繁に訪れるとともに、台湾の漫画を求めて海外からのお客さんもいるようです。
3階は漫画家たちの創作・交流スペースとなっており、定期的に若手漫画家向けの講座が開かれたり、漫画家・脚本家・出版社のマッチングが行われたりしています。

國家漫畫博物館籌備處|推廣臺灣漫畫

台湾の歴史、文化、自然が融合したスポット
引用:台中市政府観光旅遊局

もともと台中刑務所として使用されていた建築群が「国立漫画博物館」として2023年12月にリニューアルオープンしました。
異なるテーマや世代の漫画作品が展示されており、訪れた人は、自由に漫画を読み、漫画イベントに参加することができます。
日本式家屋と漫画のコラボはとても興味深く、写真スポットも多いので、ぜひ台中を訪れた際には足をのばしてみてはいかがでしょうか。 

今の台湾漫画がすごい理由

・自由なテーマ

近年の台湾漫画の特徴の一つは、多様なテーマがストーリーの軸になっていることです。
例えば、金漫賞の受賞作品に注目すると、同性愛をテーマにしたものや囲碁をテーマにしたものが大賞に輝いています。
先ほど紹介したCCC追漫台は、ほかの国や地域の漫画プラットフォームに比べると、多彩なジャンルを網羅していることが特徴です。

世界中にファンをもつBLコミック「DAY OFF」
引用:Amazon

まだ台湾の漫画制作産業が進化過程にあるため、台湾内で『良い漫画』が定義されていないことがその一因だと言われています。
また、台湾社会では「多様性」がキーワードとなっていることから、宗教や文化、歴史やLGBTQといった題材も自由に扱うことができ、読者の関心が分散化している今の時代にぴったり合致しています。

・作家の独自性

台湾では、多くの漫画家が、ストーリー作りから作画の仕上げまでを一人で担当しています。
それにより、生産量は上げにくいものの、作品の隅々まで作家らしさが出て、濃密な世界観がつくりだされるそうです。
さらに、2023年の金漫賞には、香港出身の柳広成が台湾で出版した作品が外国籍の作家として初めてノミネートされました。
このような作家自身の自由度や多様性も、台湾漫画を彩っている要因です。

・海外との結びつき

台湾の歴史は日本、中国、アメリカを抜きに語ることはできませんが、それらは台湾の漫画にも大きな影響を与えています。
ストーリーの観点からも、作画の観点からも、台湾の漫画家は、海外文化のさまざまな要素を取り入れているのです。

例えば、台湾漫画をみてみると、日本で一般的な白黒で描かれた画風の漫画もある一方で、フランスやアメリカで一般的なグラフィックノベル形式のものもあります。また、韓国で人気を博した縦型漫画も増えており、なかには金漫大賞の受賞作品もあります。

・国際社会での評価

このような特徴を生かした台湾漫画は、近年世界から注目が集まっています

日本の外務省が主催する第19回日本国際漫画賞(2025年)では、台湾の漫画が銀賞、銅賞、奨励賞を受賞しており、過去には金賞や銀賞にも輝いています。
フランスで開催されていた世界的な漫画祭には、「台湾館」として常態的に出店していました。台湾から離れたフランスでも、台湾漫画は60作品以上販売されているそうです。
また、タイやベトナムでは、台湾の同性愛漫画が人気となっているそうです。
このように、最近では、台湾と海外諸国の間に、台湾漫画を通したつながりが形成されているのです。 

初めての方へ!おすすめ作品3選

守娘

引用:Amazon

2020年の金漫賞・漫画新人賞を受賞した作品です。
清朝時代の台湾が舞台となっており、タイトルは台湾に伝わる妖怪・幽霊が由来です。
当時の男尊女卑や迷信を描いているストーリーですが、現代に生きる私たちにも通ずる部分があると台湾内外から高い評価を受けています。

葬送のコンチェルト(送葬協奏曲)

引用:Amazon

第14回日本国際漫画賞の金賞に選ばれた作品です。
大学卒業後に偶然葬儀屋となった主人公が、命や家族と向き合う物語。
人間が共通してもつ人生観とともに、台湾ならではの慣習も垣間見えます。
台湾文化部は小中学生の課外読み物優良作品にも選んでおり、老若男女問わずおすすめです。

山間料理人

引用:Amazon

第19回日本国際漫画賞の優秀賞に選ばれた作品です。
料理に長けたアミ族の少女が主人公となっており、花蓮が舞台となっています。
人のもつ温かさに触れながら、台湾原住民の文化や、第二次世界大戦期の日本との関係性も学ぶことができる一冊です。 

まとめ ―台湾を“読む”という新しい楽しみ方

台湾文化といえば、グルメや旅行といったイメージが強いですが、漫画業界も非常に注目されています。台湾社会、そして台湾の歴史を反映した、自由さと多様性が、台湾ならではの漫画を生み出しているのです。同時に、政府が積極的に支援することによって、デジタル化や多言語対応が進み、「世界に届けるコンテンツ」として存在感を高めています。

まだ台湾の漫画を読んだことがない人は、ぜひ気になる一冊を試し読みという形でも読んでみてください。漫画を通して触れる台湾は、旅行やほかのエンタメコンテンツとはまた違った側面をみせてくれます。次の台湾旅行がさらに深く、面白いものになる――そんなきっかけとしての台湾漫画、いかがでしょうか。


記事執筆:シャンシャン

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筆者プロフィール

シャンシャン
美麗!台湾学生ライター
幼少期から中華圏に縁があり、大学で中国語を専攻、台湾で半年間インターンシップを。
台湾の「飾らない」一面が好きで、宜蘭を10時間ひたすら探索したり、オフシーズンの緑島を自転車で回ったり…。
現在は日本で楽しめる台湾コンテンツやグルメを日々探し中。

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