台湾南部の市街地からバスに乗ること約1時間。あたりに広がるのは、緑豊かな山々とどこか懐かしい街並み。高雄市に位置する旗山・美濃エリアは、歴史や文化、自然、グルメなど、さまざまな魅力に溢れています。
今回は、基本情報からおすすめスポットまで、じっくりご紹介します。

旗山・美濃エリアの基本情報とアクセス方法
「旗山」と「美濃」は隣接しており、どちらも高雄市の中央に位置する、台湾を南北に貫く中央山脈のふもとにある街です。
「旗山」は商業の街として栄えてきました。1900年代前半には砂糖の生産やバナナの栽培が盛んになり、「旗山老街」が誕生。サトウキビの運搬に使用された台湾糖業鉄道旗尾線の旗山駅を中心に、西洋式の建築が並んでいます。
「旗山老街」は、台湾に数多くある老街の中でも人気が高く、2023年には訪問客数ランキングの1位を獲得したことも。歴史ある街並みと、バナナスイーツをはじめとしたさまざまなグルメを楽しめる場所です。

「美濃」は客家の町として知られています。「客家」とは中国大陸の広東・広西・江西・福建に暮らしていた人々で、清朝時代の17〜19世紀頃に台湾へ移住してきました。先住の人々との衝突を避けるために山間部へ逃れ、だんだんと平原地帯へと移り住むようになり、200年以上にわたり土地を開墾しながら集落を築いてきました。美濃の他にも、桃園・新竹・苗栗などの地域で客家文化が受け継がれており、現在も台湾の人口の15%ほどを占めると言われています。

旗山・美濃エリアへは、台南市街地や高雄市街地からバスでアクセス可能です。
・台湾鉄道「台南」駅を利用する場合
高雄客運8050路線に乗車します。(所要時間約1時間30分)
一日6便運行しており、9:10発または10:10発がおすすめ。運賃は140元です。
筆者はこの方法を利用しました。乗車・下車ともに始発・終着駅のため、安心して向かうことができます。曲がりくねった山道を通り、車窓の風景も見ごたえ抜群です。
旗山から台南への最終便は17:10発、日帰りで十分に楽しむことができます。旗山老街+美濃エリアまたは旗山老街+三桃山森林休閒園など、エリアを絞った散策がおすすめ。各エリアの詳細については、本記事でご紹介します。
・台湾高速鉄道「左營」駅を利用する場合
高雄客運E01旗美國道快捷に乗車します。(所要時間約40分)
30分から1時間ごとの運行間隔で、運賃は70元です。
引き続き乗車すると、「美濃」エリアへそのままアクセスも可能です。
どちらの方法でも、「旗山轉運站(旗山バスターミナル)」で下車。「旗山老街」へは徒歩5分ほどで到着します

景色もグルメも楽しめる!「旗山老街」散策ガイド
バスを降りてまず「旗山老街」へ。
街並みを楽しむのはもちろん、魅力的なグルメもたくさん。老街をお散歩しながら、その周辺のグルメを探していきます。
有名なグルメの一つが紅糟肉(ホンザオロウ)。紅麹に漬けた豚肉をカリッと揚げた料理です。ほんのりとした甘い香りやきれいな赤色の衣が食欲をそそります。
発酵食は客家を代表する食文化とされており、紅麹を使用することで肉の保存性を高めていました。

こちらのお店では、紅糟肉の他にも、ぷるぷるした皮の中に豚肉の餡を包んだ「肉圓(バーワン)」やちまきなどのメニューも楽しむことができます。
年間を通して温暖な台湾南部。お散歩の途中には冷たいスイーツを食べたくなります。
旗山エリアには、アイスやかき氷、ドリンクスタンドもたくさんあります。
特に有名なのは、清冰(チンビン)という、水・砂糖・香蕉油(バナナ油)を使って作られた、台湾南部で親しまれている伝統的なアイスです。氷の舌触りとバナナ油の滑らかさが合わさった食感は、どこか懐かしく感じます。
老街から10分ほど歩いていくと、レトロな看板を構えるお店が。「常美氷店」は1945年に創業し、今もなお伝統的な製法や味を守り、多くの人に親しまれています。
バナナを使用した「清冰(チンビン)」から、アイスクリーム、棒アイス、パフェまで、種類豊富です。


また、街を歩いていると至るところで、旗山産バナナの販売やバナナを使用したスイーツを見かけます。

大きな見た目が印象的なバナナ煎餅。薄焼きの生地の中にバナナチップがたくさん敷き詰められており、バナナの香りとほんのりとした甘さは、パリパリとした食感と合わさってクセになります。

バナナの大きなオブジェが印象的な「台青蕉」。バナナスイーツの販売と店内にはカフェスペースがあります。
看板メニューのバナナを使用したかき氷やシェイクは、どれも自然な香りと甘さが広がり、バナナ好きの方におすすめです。



他にも食べ歩きにぴったりのグルメがたくさんあります。
しょっぱいおやつを食べたいときにおすすめなのが、老街と交差する華中街沿いにある屋台「小上海香酥雞」で販売されている、甜不辣(ティエンブーラー)のチップスです。
「甜不辣」は台湾で親しまれているさつま揚げのような練り物で、煮物やそのまま揚げて食べることが多いです。このように、薄くスライスして揚げたものは、初めて見かけました。
パリパリの食感とやさしい塩加減が、一度食べたら止まらない美味しさです。オリジナルの味付け以外にも、胡椒やスパイシーなフレーバーを選ぶこともできます。


老街から一本先の大通りへ、延平一路にお店を構える「旗山包子舖」。包子(肉まんやあんまん)、饅頭(中華風蒸しパン)を販売するお店ですが、甜甜圈(ドーナツ)も人気商品の一つです。営業開始の14時頃には多くの人で賑わい、夕方ごろには売り切れということも。カリカリとした生地と粉砂糖がザクザクとした食感の、台湾らしい一品です。


老街の突き当りにあるのが「旗山車站(旗山駅)」。日本統治時代の1910年頃、台湾糖業鉄道旗尾線の駅として建てられた駅です。サトウキビの運搬を中心に、旅客の運送も行っていました。

台湾で最古の遊園地!?「三桃山森林休閒園」へ
旗山老街から歩いて20分ほどの場所にある「三桃山森林休閒園」。老街を離れて住宅街を進んでいくと、徐々に山の雰囲気が感じられるようになります。登り坂の上には大きな「三桃山」という看板が。
1937年に開業し、台湾で最も古い遊園地の一つとも言われています。レトロな雰囲気が好きな方におすすめのスポットです。
遊園地とされていますが、緑豊かな大きな公園で、散策や景色を楽しむことができます。


園内に入ると、神話や童話などをテーマにした広場があります。
木々に囲まれる中には、洞窟も。洞窟の中はかなり狭く、迷路のようになっています。石やカラフルな像と隙間から差す光から、不思議な雰囲気を味わうことができます。



傾斜地に位置しており、園内を進んでいくと高台へ着きます。そこから見えるのは、旗山や美濃エリア、その奥に連なる山々など、山の上ならではの景色です。レトロな遊具や大きな滑り台、空中自転車などもあり、自由に楽しむことができます。





客家文化の息づく美濃エリアへ
旗山轉運站(旗山バスターミナル)からバスで20分ほどの場所にある「美濃」エリア。路線図に「美濃站」という表示のある、高雄客運E01旗美國道快捷やE28高旗美濃快線に乗車します。


この地域では、住民の9割以上が客家の人々だと言われており、街を歩けば、食文化や建築、習慣などの客家文化と出会うことができます。大きな川や水路、バナナの木、近くに見える山……、自然豊かでのどかな雰囲気も印象的です。



美濃に来たら欠かせないのが客家料理です。
中でも有名なのが、「粄條(バンティアオ)」。米粉から作られた平たい麺で、炒めたものやスープなど、食べ方はさまざまです。街を歩いていると「粄條」と書かれた看板をたくさん見かけます。

「美光粄條店」は地元の方から観光客まで、多くの人で賑わう客家料理の店です。「粄條」は、スープの中に入った「粄條(湯)」、汁なしの混ぜ麺「粄條(乾)」、野菜と一緒に炒めた「炒粄條」があります。「粄條(湯)」は、フライドエシャロットの香りともやしの食感が絡み合い、粄條の美味しさを引き立てます。「炒粄條」は、もちもち食感の麺と色とりどりの野菜、やさしい味付けのバランスが相性抜群です。
このほかにも、美濃の特産品とも知られる「野蓮」の炒め物、豚足を煮込んだ「紅焼豬腳」、ピーナッツから作られたもちもち食感の豆腐に甘いタレをかけた「花生豆腐」など、さまざまな客家料理を楽しむことができます。





街を散策すると、ゆったりとした空気感を味わいながら、建築やローカルな街並みを楽しむことができます。
麹や漬物などの保存食は、客家に伝わる食文化の一つです。その中でも有名なのが、塩漬けの大根を干した「菜脯(ツァイポー)」。菜脯は卵焼きや飯糰(台湾式おにぎり)、お粥などにも使用され、台湾各地で親しまれています。

バスターミナルから歩いて2分ほどの場所にある「菸仕物所」。日本統治時代の木造建築をリノベーションして作られた文化施設です。1939年に建設され、たばこ農家への栽培指導や集荷のために使われていました。カフェスペース、食料品や藍染作品や手作り雑貨の販売など、アートと地域の特色を大切にした空間となっています。

「永安老街」には客家様式で作られた建物がたくさん並んでいます。
その一つである「美濃邱添貴派下夥房」は、現在も建物内とその中に作られた展示スペースの見学が可能です。
邱家は清朝時代から美濃に暮らす一族であり、1920年代にこの建物が建てられました。客家建築の特徴である、中庭を取り囲むように家屋を配置した四合院造りです。建物の名前にもある「夥房」はこのような客家様式の建築を指します。

バスで10分ほど旗山エリアへ戻った場所にあるのが「美濃民俗村」。
テーマパークのように賑やかな雰囲気のなかで、客家文化の体験やお土産、軽食を楽しむことのできる施設です。ピーナッツやゴマ、玄米などを擦って淹れる客家に伝わるお茶「擂茶(レイチャ)」の手作り体験や、油紙を貼った唐傘「油紙傘」の色付け体験、昔ながらのおもちゃで遊ぶコーナーなどもあり、ご家族での旅行にもぴったりです。


旗山・美濃エリアで心もお腹も満たされる
台湾には、文化や歴史を大切にした街並みや料理がたくさんあり、その魅力は、市街地を離れるとさらに色濃く感じることができます。また、台湾は面積の3分の2が山地や丘陵地帯で占められているため、山や緑を近くに感じることもおすすめの楽しみ方です。
バスで手軽に訪れることのできる旗山・美濃エリア。台南や高雄から少し足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
記事執筆:さら
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筆者プロフィール

さら
高校1年生の時、学校のプログラムに参加し、はじめて台湾を訪れた。言葉も習慣も分からない私を温かく迎え入れてくれたこと、日本と台湾の似て非なる街並みやそこに漂う空気感に強く心惹かれる。同年に2度目の台湾へ。
2度目の渡台以降、コロナ禍の渡航制限によって、旅行したい気持ちを堪えることに。その期間を活かし、音楽や映画、ドラマなどを通してさまざまな魅力を発見しながら、台湾華語の学習を開始した。
渡航制限解除後は何度も台湾を訪れ、台湾に住まないと気が済まないという気持ちが生まれる。そして、2025年5月末よりワーキングホリデーを利用し台南での生活を始める。大学で写真を専攻していたこともあり、台湾での路上スナップ撮影が好き。
