台湾野球はなぜ熱い? WBCで見える“もうひとつの台湾文化”と台湾代表の誇り

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2026年3月、世界中の野球ファンが熱狂するWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が開幕します。なかでも大きな注目を集めているのが、台湾代表と日本代表の対戦です。

近年、国際大会で存在感を高めてきた台湾野球にとって、WBCは世界に実力を示す大舞台。台湾では代表戦のチケットが発売直後に完売し、各地でパブリックビューイングなどのイベントも開かれます。レストランや夜市でも試合中継が流れ、得点のたびに歓声が上がる――その熱気は、旅行者でもすぐに感じ取れるほどです。

いまやWBCは単なるスポーツ大会ではなく、台湾野球を通じて人々が誇りやアイデンティティを共有する特別な時間でもあるように感じられます。

では、なぜ台湾の野球観戦はここまで白熱するのでしょうか。そこには、日本統治時代から続く野球の歴史、プロ野球リーグの発展、そして国家認同(アイデンティティ)と結びついた社会的背景など、さまざまな要素が絡み合っています。その文脈を知れば、観戦はより深く、より面白くなるはずです。本記事では、その理由をひもときます。
 

 

なぜ台湾人は野球に熱いのか?

台湾に野球が根付いたのは、日本統治時代(1895〜1945年)にさかのぼります。当時、学校教育の一環として野球が広まり、各地でチームが結成されました。とくに1931年、嘉義農林学校(嘉農)が日本の甲子園大会で準優勝した出来事は、台湾野球史の象徴的な瞬間として今も語り継がれています。この物語は映画『KANO』にもなり、野球は単なる競技ではなく、地域の誇りを背負う存在となっていきました。

戦後もその流れは途切れません。社会人野球や少年野球が盛んになり、1990年にはプロリーグが誕生。現在の中華職業棒球大聯盟(CPBL)へと発展し、球場はエンターテインメント空間として独自の進化を遂げました。応援文化やチアリーダーの存在は、台湾野球ならではの観戦スタイルを生み出しています。

そして忘れてはならないのが、台湾原住民族の存在です。台湾代表チームには、アミ族やパイワン族など、原住民族出身の選手が数多く名を連ねてきました。身体能力の高さと精神力の強さは高く評価され、台湾野球を支える重要な存在となっています。野球は、多民族社会である台湾を象徴するスポーツでもあるのです。

こうした歴史と社会背景が重なり合うことで、台湾の野球観戦は単なる娯楽を超えた体験へと昇華します。だからこそ、国際大会での勝利は一勝以上の意味を持ち、台湾という存在を世界に示す瞬間ともなるのです。

2024年 WBC 台湾vsアメリカ戦(東京ドームにて撮影)

台湾 vs 日本という特別な試合

台湾と日本は、野球を通じて長い歴史を共有してきました。日本統治時代に学校教育を通じて広まった野球は、その後も台湾社会に深く根づき、独自の発展を遂げます。戦後も両国は互いに影響を与え合い、学び合いながら野球文化を成熟させてきました。

台湾野球の象徴的存在といえば、元メジャーリーガーの王建民(ワン・チェンミン)です。ニューヨーク・ヤンキース時代の活躍は台湾中を熱狂させ、台湾代表の誇りとして今も語り継がれています。その存在は日本の野球ファンにも広く知られ、台湾野球の実力を世界に示しました。

一方、日本を代表するスター・大谷翔平のプレーは台湾でも絶大な人気を誇ります。二刀流という唯一無二の存在は、台湾メディアでも大きく取り上げられ、WBCのたびに台湾代表との対戦が大きな注目を集めます。

台湾では日本のプロ野球も長年放送されてきたことから、日本野球の戦術や育成システムは広く知られています。その影響は台湾代表のプレースタイルにも見られ、堅実な守備や状況判断の巧みさ、チームワークを重視する姿勢などに共通点が指摘されることもあります。

台湾代表にとって日本は重要な対戦相手であり、日本にとっても台湾は着実に力を伸ばしてきた存在。真剣勝負の中に互いへのリスペクトがにじむ。その独特の空気感こそが、台湾vs日本戦を“特別な一戦”にしているのかもしれません。

2024年 WBC 熱気漂う東京ドーム球場内の様子

2026年WBC 大会の見どころ3つ

1.若手選手の活躍 & 監督の戦略

2026年大会では、若手世代の台頭が注目されています。近年、台湾ではメジャーリーグ挑戦を目指す選手が増え、国際大会を経験する機会も広がっています。若い世代がどのような役割を担うのかも見どころのひとつです。

また、監督の戦略にも関心が集まります。近年の台湾代表は機動力や粘り強い打線を特徴とする傾向があり、一方の日本代表は投手層の厚さと堅実な守備力に定評があります。両チームの戦術の違いが、試合展開にどのような影響を与えるのか、今から楽しみです。

台湾プロ野球コミッショナー・蔡其昌氏とチア(2024年 WBC 東京ドームにて)

2.球場はエンターテインメント空間

台湾の野球観戦で特徴的なのが、その応援スタイルです。日本の応援文化と共通点もありますが、よりエンターテインメント性が強い点が特色とされています。現在の台湾プロ野球(CPBL)では全球団にチアリーダーチームがあり、高い人気を集めています。チアは球団の象徴的な存在であり、台湾野球文化を語るうえで欠かせません。

試合中は攻撃のたびに音楽が流れ、観客が振り付けを楽しむ場面も見られます。スタジアムはライブ会場のような一体感に包まれます。
 

3.選手の一勝に込められた想い

2024年の世界野球プレミア12では、台湾が主要国際大会で初優勝を果たしました。その際、胸元の表記やチーム名の扱いをめぐり、台湾国内では大きな話題となりました。決勝戦で本塁打を放った主将・陳傑憲(チェン・ジェシン)は、ベースを回りながら胸元で両手を使って四角形を作るポーズを見せます。このジェスチャーは国際大会の名称規定によりユニフォームに表記されていない「Taiwan」を象徴しているのではないかと台湾メディアやSNSで解釈され、多くのファンの共感を呼びました。

国際大会において名称の扱いは歴史的経緯を含む複雑な背景があります。しかし、その一勝一勝が台湾の人々に特別な意味を持つことは確かです。
野球のプレーだけでなく、応援文化やユニフォームといった周辺の要素にも目を向けることで、WBC観戦はより立体的に楽しめるはずです。

台灣加油! 応援の幕が数々のメディアの目に…(2024年 WBC  東京ドーム)

台湾野球の熱気を味わい、もう一つの台湾を知る

いよいよ決戦の時。勝っても負けても、台湾の人々は代表チームに熱い声援を送ります。そこにあるのは損得ではなく、純粋にチームを信じて支える姿勢です。

野球は単なるスポーツを超え、“台湾という存在を世界に示す舞台”としての意味を帯びています。多民族社会である台湾が一つになり、歴史を背負いながら未来へ挑む――その象徴的な瞬間が、国際大会の一戦一戦に凝縮されています。

たとえ日本の球場や台湾の現地に足を運べなくても、その熱気は画面越しに伝わってくるはずです。テレビの前で声を上げ、SNSで想いを共有し、一球ごとに一喜一憂する。その時間そのものが、台湾とつながる体験になるのではないでしょうか。


記事執筆:加賀ま波 (MAHA)

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筆者プロフィール

加賀ま波(MAHA)
台湾大好きライター│ハンドメイド作家
著書に『台湾を自動車で巡る。台湾レンタカー利用完全ガイド』(なりなれ社/KKday・budget協賛)、『慢慢來 あの日の台湾210days』(想創台湾)がある。

2011年、はじめての台湾旅行中に東日本大震災が発生。台湾から見た日本の情景と、自分自身の台湾への無知さとの乖離に違和感を感じ「台湾をもっと知りたい」と思うようになる。同年、嘉義県大林のボランティア活動に参加し、台湾人の温かいおもてなしとキテレツな文化に触れ、帰国後もずっと台湾のことが頭から離れなくなる。その後も渡台を繰り返し、2021年のコロナ禍にワーキングホリデーと留学の夢を叶える。

現在は、美麗(メイリー)!台湾の専属ライターとして、取材執筆、SNS運営、イベント運営などを担当。個人の活動では「想創Taiwan」というブランドを展開、原住民レースなどでオリジナル雑貨を創作し日本各地の台湾関連イベントで販売中。HP・通販Instagram

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